眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす




『ああ…』と答えた男の返事は、繋がる前後の声に比べてどうしてかとても小さく聞こえた。

だけど今は、そんな些細な変化に構っている暇はない。



「秘密を知ったせいで鬼炎魔の連中に拘束されかけて、抵抗して階段から真っ逆さま。そのあとは俺がどうにかここに連れ帰ってきた」



じゃあ、この男が助けてくれたってこと、なのかな。

ううん、何も記憶がないからそれも定かではない。


この男の言葉を信じていいものなのか、記憶がない私に判断は出来ないけれど……

だけど記憶がないからこそ、今はこの男の言葉に(すが)るしかない。



「ここは……あなたの家?」

「だな」



視線が動く範囲で見渡せば、殺風景な部屋の様子が(うかが)える。

新築からは程遠い古びた内装と、一人暮らしを思わせる六畳ほどの一間。

生活感のない静かな部屋は、さっきの返事のように小さく、どこか物悲しい空間に感じた。