「起きたか」
「……!」
痛みで身動きが取れない中、真横から聞こえた声にどうにか首を動かし視線を向ける。
ハラ…っと前髪が顔に落ちて視界を妨げたけど、
前髪の向こうには見知らぬ男が1人、私の真横、同じ布団の中に横たわって恐らく寝起きの顔をこちらに向けていた。
「あ、の、…」
聞かなくちゃ。
「わた、し…」
早く、確かめなくちゃ。
「私、は……」
自分がどこの誰なのかを知って、早くこの、
全身を覆うこの恐怖から抜け出したい。
「私……誰、ですか」
「は?」
「思い出せないんです、なにも……、自分のことも、家族のこともっ……」
「……」
「私は、誰ですかっ……」