「言えなかったな、『メリークリスマス』」
「、…」
離れた唇が、意地悪く弧を描く。
「っ……年に1度のイベントなのに、」
「いーだろ、別に」
「よくない、ここに来た目的が、」
「来年」
「……」
……来年?
遮られて見上げた横顔は……ツリーの光に照らされて、本物の王子様のようだった。
「来年、また言いにくればいーだろ。一緒に」
「、…」
単純な私は、コロッと気持ちが変わっちゃう。
叫びたかったメリークリスマスが、叫べなくてよかったメリークリスマスになってしまう。
だって来年も一緒に来ようって、御影さんに誘われたみたいで。
来年も『くだらない』って参加を渋ってキスしてくれたら、その次、再来年も一緒に来てくれるんじゃないかって。
そんな未来を想像したら……
冬の寒空の下、心の中はどうしようもないほど温かくなっていた。


