眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす




辿り着いた駅前は、クリスマスだけあって大混雑。


手を繋いでなかったらすぐにでもはぐれそうな人混みの中、どうにかツリーの傍に到着。



「わぁ……! 大きい!」

「へぇ、思ったより見応えあるな」



ツリーを見るふりをして隣を見上げれば、満足気な横顔が見えた。


私が望んだ場所なのに、御影さんが喜んでくれたことで来られてよかったって強く思う。



そんなことを考えていると、隣から視線が落ちてきて。


なにを思ったのか、ふ、と笑われた。



「あ、もうすぐ時間だ!」

「時間?」



広場の端にある時計が、18時になろうとしている。



「クリスマスの18時に、みんなで『メリークリスマス!』って声を合わせるのがこの広場の恒例らしいんです。年に1回のビッグイベントですよ」

「くだらねー」

「え、あと1分切ってるのにまさか参加しないんですか!?」



繋がっている腕を、もう片方の手でゆさゆさ揺らして訴える。

にもかかわらず御影さんはそっぽを向いて、興味ない態度を貫いた。