眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす




「でも寒そうだから」

「外したらみのりが寒くなんだろ」

「そうだけど……2人でできる長さじゃないし、だから御影さんが使ってください」

「なんでそうなるんだよ」



首めがけて背伸びをしても、手を掴まれて阻止されて。

お互い譲らない攻防の末、マフラーの貸し出しは叶わなかった。


だけどこのままじゃ、御影さんが風邪を引いちゃいそうだから。



「わかりました、じゃああのお店に入りましょう」



指さしたのは、横断歩道を渡ったところにあるセレクトショップ。



「御影さんへのクリスマスプレゼント、マフラーにします」

「え…」

「え?」



一瞬、御影さんが今まで一度も見せたことのない顔をした。


驚きの中に戸惑いが混じったような、そんな顔。


だけどすぐにいつもの御影さんに戻って、



「どんだけ付けさせたいんだよ、マフラー」



いつもみたいに笑うから、さっきの表情は私の見間違いだった気がしてくる。



「冬に首丸出しで歩いてるの、御影さんくらいですよ」

「それは」

「それは?」

「……」

「御影さん?」

「別に、なんでもねー」



やっぱりなにかを誤魔化すように言って、御影さんは横断歩道へ歩き出した。