眠れない総長は眠り姫を甘く惑わす




帰ってきた六畳一間。

でも、今のところ会話はない。


部屋の隅に座ったまま、かれこれ30分近くは経ったはず。

御影さんは私とは反対側の壁際で、ずっとスマホをいじっている。


話しかけようか迷っているうちに、時間はどんどん流れていって……

結局、日が暮れてしまった。


夜ご飯、どうしよう。

作ったら食べてくれるかな。


冷蔵庫、前みたいに勝手に開けてもいいのかな。



「あの、」
「なあ」



これだけ長い時間黙っていたのに、どうして声を出すタイミングが被るのか。

御影さんからどうぞって意味を込めて視線を向けると、スマホを床に置くのが見えた。


こっちに向けられた青い瞳が私を捉えて、否応なくドキリとする。



「あのさ、あとどんだけ耐えればいいの」

「何を、ですか」

「みのりと喋んない時間。そろそろ限界なんだけど」

「……」



つまり……私と喋りたいってこと?



「た、耐えてたんですか?」

「まぁ」

「話しかけてくれればいいのに」

「でもお前、まだキレてんだろ。やっと帰ってきたのになんも喋んねーし」

「それは……」



届いた言葉に、心臓がぎゅっとなる。


『やっと帰ってきた』って。

そんな風に思ってくれていたんだとしたら、嬉しい。