「よろしくない事態ですわ」

 キャロルは、王太子妃が住む予定の部屋で二輪の薔薇を見つめていた。
 昨晩、レオンによって握らされた『誠実』は、公爵家から運ばれてきた『感謝』とともに大きめの花瓶に入れられている。

「二夜目も無事に越えてしまうなんて。さらに、シザーリオ公爵家のお屋敷を追い出されてしまうなんて……」

 立てこもりの一報を聞いた兄セバスティアンは、胃を抑えながら王城へやってくると土下座する勢いでレオンに謝り、二輪目を手にしたキャロルに言った。