兄の絶叫を聞きながら、キャロルは座席に座った。
 胸がドキドキと高鳴っている。
 四歳で王太子妃候補になってから、ずっと王都のなかで生活していたので、領地までの移動ですらも冒険なのだ。
 
「各地のおいしい物を食べながら進むのはどうかしら。テントを張って野宿も経験してみたいわ。釣った魚や森でとったキノコを焼いて食べるの……。これまではレオン様の妃になるために勉強の毎日でしたけれど、一人で生きていけるような経験をどんどん積まなくてはなりませんわね」

 決意を新たにしたそのとき、馬車がガタンと大きく揺れて止まった。
 見れば、キャロルが乗った馬車と荷馬車の周りを、覆面の男たちが取り囲んでいる。荒野に出るという山賊のようだ。

「下りろ!」
「はい」