キャロルは、セバスの頭上を見て、残念そうに首を振った。

「かわいそうに。手遅れですわ……。シザーリオ公爵として、三ケタはどうかと思いましてよ。女性に愛の言葉ひとつ言えないから、いつまで経っても縁談がまとまらないのでしょう。公爵家が断絶するかもしれません……」
「大きなお世話だ。それに、結婚前日に婚約破棄なんか通るか! 今から支度するから待っていろ。お前といっしょに、王太子に頭を下げにいく」
「行くならお兄様お一人でどうぞ。わたくしもう出発しますので」

 侍女に呼ばれたキャロルは、馬車に飛び乗って、白いハンカチを振った。

「お兄様、どうかお元気で!」
「待てこら、逃げるなキャロルーーーーー!!」