キャロルが立っているのは、深紅の絨毯が敷かれた教会のなかだった。

 結婚式典の準備はすっかりととのい、並んだ木製のベンチと壁に、白い薔薇のブーケや王室の紋章が刺繍された巨大なフラッグが掛けられている。
 立ち会い人である教皇や聖歌隊の少年たちもそろっていて、式典の主役であるキャロルとレオンを見つめていた。

「いつの間に式典会場に!? ここに立つのは、レオン様の恋人ですわ。わたくしがいてはいけません!」
「君以外の恋人なんて来ないよ」

 ドレスをたくし上げて参列者席に向かおうとしたキャロルは、レオンに呼び止められて振り返った。

「来ない? 呼んでいないということですか?」