「俺も、自分で思う以上に、キャロルからの愛をもらっていたよ」

 ヴァイオラの指輪を指にはめたレオンには、キャロルの頭上の数字が見えている。

 十二夜の前日にキャロルの様子がおかしくなるまで、レオンからは直接的に愛を伝えていなかった。お姫様扱いはしても、好きや愛してるとは言わなかった。

 だが、キャロルは言葉で、態度で、表情で、好きだと伝えてくれていた。きびしい王太子妃教育も、大好きなレオンと結婚するために頑張ってくれた。
 嘘いつわりなく、大好きを送り続けてくれた。それなのに。

「俺は、キャロルからの疑いようのない愛を、十二夜の最中に疑いそうになった。エイルティーク王国の結婚儀式は、十二日もの期間を要する。その間、新婦には考える時間が与えられる。新郎は、新婦が悩んでいる様を見せつけられながら、辛抱強く儀式を続けていかなければ大好きな人と結ばれない。俺たちが、心の揺らぐ出来事に見舞われたのは、お互いの愛をたしかめるための試練だったと、今なら分かるよ」