無事にキャロルは十二本目の薔薇を受け取った。

 十二夜目に行われる結婚式はあげていない。結婚指輪も交換していない。
 けれど、たしかに結婚した二人を、シザーリオ公爵家の奉公人たちは心から喜んで朝までお祝いした。

「……まったく。たかが結婚で騒ぎすぎだ」

 誰より泣いていたセバスティアンは、祝い疲れた使用人たちに一日の休暇を与えて、一人で屋敷のゴミを拾い集めていた。
 あちらこちらでクラッカーを鳴らしたせいで、紙吹雪が飛び散っている。

 食堂のテーブルを拭いていると、寝起きのレオンが現われた。
 顔を洗ったばかりのようで、前髪がしっとりと濡れている。指の中途半端な位置には、キャロルに嵌められた指輪があり、ふしぎな色合いに光っていた。