「爵位をもって生まれついているのに、なぜあそこまで浅ましい……」

 キャロルであれば、仮病で倒れて相手に取り入るような真似はしない。
 好きになったら一直線で、誰に対しても素直で、この世のすべてを慈しむ優しい心を持っている。

 キャロルの純粋さに救われているのは、レオンだけではない。セバスティアンも、シザーリオ公爵家の使用人も、王城の奉公人たちも、彼女の朗らかさに助けられてきた。彼女を思う者たちは、十二夜の中止を自分のことのように嘆いている。

 レオンは、椅子にぐったりともたれかかって、疲れた目を手で覆った。

「……キャロルに会いたい」

 だが、まだ迎えには行けない。