親の打算をくみ取った娘たちは、行儀見習いという名目で王妃の侍女仕えをしながら、偶然を装ってレオンに近づいた。
 もっとも多かったのは、廊下ですれ違う瞬間に、貧血を起こして倒れる手口だ。

「あ~れ~~」

 今日もどこかの貴族令嬢が倒れた。
 レオンは、側近の騎士に目をやって体を抱き起こさせる。自分では手を貸さずに、あくまで上司として命じた。

「王妃の部屋へ連れていけ。いきなり倒れるか弱い者に侍女仕えさせるなと、実家に送り返すように注進するのも忘れるな」
「えっ!? 待ってください、助けていただいたお礼を申し上げたいです、レオン王太子殿下!」

 侍女は、元気に飛び起きた。貧血を起こした人間が、ここまで俊敏に動けるはずがない。
 無視して廊下を進んだレオンは、執務室に入って溜め息をついた。