十一輪目の薔薇を渡せなかった王太子に、世間の目は同情的だった。

 幼い時分から王太子妃教育に励んできたキャロル・シザーリオ公爵令嬢が、今になって十二夜から逃げたがっているという話が、まことしやかに囁かれていたからだ。
 公爵令嬢は、王太子を嫌っている。そう信じる者もいた。

 実際には、レオンを心から愛しているからこそ、自分との十二夜を阻止しようとしたのだが……。

 セバスティアンの申し出もあり、窃盗団の魔の手から救い出されたキャロルは、シザーリオ公爵邸で療養することになった。

 王太子の側から婚約者が去った。
 これを好機とみた貴族たちは、こぞって城に娘を送り込んだ。
 十二夜に失敗して消沈している王太子に見初められれば、家から未来の国母が生まれるかもしれない。