こんな時間に誰だろう。気心の知れたタリアか、もしくは、用事のためなら妹を叩き起こしても許されると思っているセバスティアンか。

「はい」

 戸を開けてみるが、廊下には誰もいなかった。
 代わりに、メッセージタグをリボンで結びつけた薔薇が一輪、落ちている。
 薔薇は、十二夜で使われていたものではなく、キャロルがいちばん好きなトゲの鋭い種だ。
 拾い上げて、タグを見る。メッセージは一言だけ。

「……『感謝』?」

 十二夜で一夜目に贈られるのが『感謝』の薔薇だ。
 誰がこんなことを……と廊下の先を見ると、窓から差す月光に照らされて、もう一輪落ちている。

 次の薔薇は『誠実』だ。辺りを見ると、廊下の曲がり角にもある。