キャロルは、指輪を嵌めた手を月光にかざした。
 レオンに返還するべきだと分かっているが、自分から連絡するのは気がひける。

 もうかれこれ、一カ月もレオンとお茶をしていない。キャロルがどこにいても迎えに来てくれていたレオンの足は、すっかり遠のいてしまった。
 タリアやマルヴォーリオが、王太子は十二夜の後始末で忙しいのだと慰めてくれたが、キャロルにはそうは思えない。

(こんなことになるなんて、思っていませんでしたわ)

 真夜中になるたび、薔薇をもらえないことに落胆して、朝まで悲しむ。
 そんな眠れない日々を、キャロルは繰り返していた。
 
 コンコン。

 部屋の扉がノックされたので、キャロルは起き上がった。