シザーリオ公爵邸の自室で、キャロルはベッドに寝転んでいた。

 時刻は十一時半を過ぎたところ。寝る支度をととのえて使用人を下がらせたので、部屋にはネグリジェをまとったキャロル一人だけだ。
 照明を落とした部屋は暗く、窓から差しこむ月の光が青く光って見える。

「……今日も、眠れませんわ……」

 窃盗団を捕まえて王都に戻った日。キャロルは実家に戻った。
 レオンとの十二夜が失敗して、もはや彼の婚約者でも何でもない、ただの公爵令嬢になったからだ。
 大事にしていた十本の薔薇は押収されてしまった。

 キャロルの手に残ったのは、レオンに無限大の愛を与えられていた事実と、「好き」と言った回数が見えるようになる、ふしぎな指輪だけである。