先頭は、栗毛の馬にのったセバスティアンだった。彼は、全速力で港まで出ると、馬を飛び降りるなりキャロルをぎゅうぎゅうに抱きしめる。

「心配したぞ! お前というやつは、いつもいつでも家に迷惑ばかりかけて!」
「ごめんなさい、お兄様。命が助かったのはいいのですけれど、十二夜は失敗してしまいました……」

 キャロルがシュンと縮こまったので、セバスティアンはレオンと顔を見合わせた。
 天真爛漫の妹が、めずらしく心から凹んでいる。
 
「なんて貴重な……じゃなかった。それはもういい。お前が生きていてくれただけで十分だ」
「はい」

 命があるのは、ありがたいことだ。
 けれど、こうも思ってしまう。大好きな人と結ばれずに生きる人生は幸せだろうか、海に沈められた方が良かったと思う日が来るのではないか、と――。

 柄にもなくセンチメンタルに浸るキャロルは、レオンやセバスティアンにがっちり守られながら、騎士団の馬車で王都まで帰り着いたのだった。