船に乗りこむ前に、ドレスへ着替えたのが功を奏した。
 遠目からも目立つ格好をしたキャロルは、灯台のように自分の居場所を発信して、レオンがたどりつく目印になったのだ。

「彼らにお礼がしたいですわ。他にも、助けていただいたことがありますのよ」
「その前に、こちらを片づけさせてくれ」

 レオンはキャロルから体を離すと、白馬に乗せていた剣を抜いてあ然としているニナに向けた。

「占い師ニナ。キャロル・シザーリオ公爵令嬢の略取誘拐と、宝物庫に保管されていたヴァイオラの宝石を窃盗した容疑で、貴殿と窃盗団を捕縛する」
「はっ。アンタひとりで、アタシたちをどうにかできるとでも?」

 失笑したニナは、手すりに飛び乗って船首に走りながら、散らばっていた仲間に呼びかけた。