白馬のうえから飛び降りたレオンは、キャロルに駆け寄って細い体を抱きしめた。

「間に合ってよかった。怪我は?」
「ロープで縛られていたところが少しだけ痛みますが、それだけですわ。わたくし、レオン様が来てくださるとは思っておりませんでした。パトリックだけでも逃がせれば御の字と思って、指輪をたくしましたの。届きましたか?」
「ああ。ここまではパトリックが導いてくれたんだよ」

 さすがレオンの愛犬。キャロルの意思をくみ取って、自分が救われるだけではなく、助けを呼びに全力で走ってくれた。
 レオンは、首輪からとった乳白色の指輪を、キャロルの手に握らせる。

「キャロルが窃盗団に捕えられて、港に向かっているという情報はつかめたんだが、出航に間に合うかどうかは賭けだった。峠を駆け下りて、迷わずにこの船に来られたのは、キャロルが綺麗なドレスを着ていてくれたからだ。これは、君の持ち物ではないね」
「男性の衣服で変装させられていたのですが、積み荷をはこぶ方々のご厚意で、令嬢らしいドレスや帽子を譲っていただきましたの」