トービー港には貨物船がいくつも停泊していた。かけ橋に向かって大勢の人々が列をなし、蓋を打ちつけた木箱や布で包まれた荷物をせっせと積みこんでいく。

 これらは、イリリア国に運ばれる輸出品だ。

 エイルティーク王国の主要生産品である綿織物やガラス製品が多く、船員は、重さのわりにかさばる荷物をかぎられたスペースに納める作業に四苦八苦している。
 朝っぱらから働き者の労働者たちを、列の途中からキャロルはながめた。

(外国船というのは活気であふれているのですわね)

 レオンと船旅に出たときは、王家が所有する豪華船に乗った。
 綺麗な内装のホールで晩餐やダンスを楽しみ、甲板に出したテーブルで紅茶とケーキを食べ、海面に花びらを巻いたり飛ぶカモメに歌ったりと、楽しいことがいっぱいの旅程だった。

 しかし、それは王侯貴族だからできた遊びだ。