「よしきた、婚約破棄よ! そういうことでしたらレオン様、わたくしは実家の領地に帰らせていただきます!」
「は?」

 不思議そうなレオンの手をガシリとつかんで、キャロルはブンブンと振った。

「よろしいのですわ。恋は突然に落ちるものだって本で読んだことがありますもの! 婚約者とはちがう方を好きになることもあるでしょう。明日の結婚式典は、ぜひその方とお挙げになってくださいませ!」
「どうして君以外と? キャロル。落ち着いて、話をきいてほ」
「こんなときに落ち着いてなどいられませんわ。それでは失礼します!」

 キャロルは、レオンの言葉をさえぎり、ドレスのスカートをつまんで走り出した。後ろで「待ってくれ」と言っていた気がしたが立ち止まらなかった。