「よく寝ていたね。おかげで何事もなく港町までたどり着けたよ。もうすぐ夜明けだ。買収した貨物船に乗り込んで、海路でこの国とおさらばする」
「もうすぐ、夜明け?」

 キャロルの背がすうっと冷えた。

 殴られて気を失ったのは、十輪目の薔薇を受け取った日の午後。
 何事もなく深夜零時を越えたら、十一輪目の『努力』を渡されるはずだった。しかし、誘拐されて連れてこられた港に、レオンがいるはずがない。

 この夜が明けたら、十二夜は失敗してしまう。

 小屋のなかが、一段と明るくなった。
 入り口の向こうを見やれば、うす雲が刷けた空の蒼が、じょじょに白へと変わっていく。

「明けないで……」