「何か悪い。アタシ、人間も嫌いなんだ」

 後頭部に手刀を入れられて、キャロルの意識は途絶えた。倒れた体に、パトリックが額をすりよせる。
 大人しくなった一人と一匹は、ニナ率いる窃盗団の馬車に乗せられて、人知れず都を後にする。

 キャロルの姿が見えないと、城内が大騒ぎになったのは、それから三時間も経った夕方だった。