「王太子の婚約者さ。アタシが魔晶石を盗んだのに気づきやがった。戻って告げ口されたら脱出計画が台無しになっちまう。荷物にはなるが、国外まで連れて行くよ」
「へい!」

 ニナの命令で、男たちはキャロルを縛り上げた。パトリックも押さえつけられ、鳴かないように布を噛ませた上に、口輪を嵌められてしまう。

「パトリックに乱暴はやめてくださいませ。その子は、王太子殿下の愛犬ですわ」
「イヤだね。アタシは犬が嫌いなのさ。こいつらは盗人の匂いをたどって追いかけてくる。それより、アンタは自分の心配しな」

 ニナは、キャロルの髪を引っ張って、無理やりに上を向かせた。

「アタシら窃盗団は、これからエイルティークを出る。いざというときの交渉材料に生かしといてやるが、無事に出られたらアンタも犬も死んでもらう」
「こ、殺すおつもりなんですの……」