「レオン様がお忙しいのは分かりますが、セバスお兄様もですか。少しゆっくりされてもよろしいのでは?」
「それは出来ない。騎士団と協力し合って、盗人を追わなければならないからな。手がかりは少ないが絶対に逃がさないぞ。くっくっく……!」
「悪い魔女みたいになっておられましてよ、お兄様」

 こんな兄でも、誰より王太子に信頼されている。それが、婚約者としてはちょっと面白くない。
 二人を見送ったキャロルは、紅茶を飲みながら唇をとがらせる。

「わたくしも、セバスお兄様みたいに、レオン様から頼りにされたいですわ……」

 セバスティアンを超えるには、圧倒的に実績が足りない。
 けれど、今回の犯人捜しでキャロルが何かしらの役に立てば、レオンが自分を見る目も変わるのではないだろうか。

 キャロルの頭上に、ふわわわわっと妄想の霧が広がる。