「……?」

 何かが、胸に引っかかる。
 しかし、今はキャロルを助けるのが先決だ。

 王太子妃のために用意した部屋に入ると、縄でグルグルに縛られた婚約者は、ソファの上ですうすうと寝息を立てていた。

「……器用だね」

 無理もない。宝物庫での事故にショックを受けて、ほとんど眠っていなかったのだ。
 しゃがんで愛らしい顔を観察していると、キャロルの目蓋がゆっくりと開いた。

「う、ん……。レオン、さま?」
「おはよう、キャロル。セバスティアンに手酷く怒られたみたいだね」