「キャロルから、王太子に大怪我をさせたと連絡が来たので、急いでやってきたが……。思いのほか軽傷だな」

 腕をくむセバスティアンの視線の先には、額にガーゼをはり付けたレオンがいた。
 体調には影響ないらしく、執務室の机に向かって、書類仕事を片づけている。

「頭の怪我は出血が多くなる。それを見たキャロルが大騒ぎしてしまったんだよ」
「そのようだな。先に面会したが、『セバスお兄様! わたくし、王太子の体に傷をつけた責任をとらせていただきます!』と自決しようとしていたので、縄でしばって転がしてきた」
「縄で……」

 裏声でキャロルの真似をしたセバスティアンを、レオンはジト目で見返した。

「彼女は未来の国母だぞ。丁重にあつかってくれ」
「ふん! 誰と結婚しようと妹なのは変わらん!!!」