「さすがに滝はないよ。それに、休憩を挟まないと歩けないほど広くもない。バスケットは置いていこうね」
「はい」

 着の身着のままでベッドを下りたキャロルの肩に、レオンはストールを巻いてくれた。やさしさのおかげで、体以上に心が温まる。

「さあ、行こうか。お姫様」

 腕をくみ、二人で廊下に出た。
 ほとんどの使用人は休んでいる時間帯なので、廊下の明かりは心許なく、城自体がひっそりと静まっていた。
 こんな時間に夜歩きなんて、不良な娘になったみたいでドキドキする。

 ふとレオンを見ると、胸ポケットに薔薇を差している。

「レオン様、その薔薇はもしかして……」