思い出したように、キャロルは、右手の薬指にはめた乳白色の指輪を、陽光にかざした。

「この指輪は、元は宝物庫にあったのを見つけられたのでしたね。レオン様は自由に出入りできるのですか?」
「許可さえとれば。魔法のかかった品や呪われた品があるから、警備が厳重なんだ。でも、きちんとした理由があれば入れるよ。そこにある大鏡は、古来から『本来の姿を映し出す』と言われていて、戦好きの侵略王と呼ばれた第十三代国王フェリペは、大鏡に映った残虐な姿を見て退位を決めたと言われている」

「恐ろしい逸話があるのですね。その魔法の鏡であれば、わたくしの『好き』と言った数字も見えるかもしれません。レオン様、連れて行ってくださいませんか?」

 両手を組んでこいねがうキャロルに、レオンは微笑んだ。
 こんな風にお願いされて、断れる男がいるなら会ってみたい。
 セバスティアンには「妹をあまり甘やかすな」と叱られてきたが、甘やかしたくなる雰囲気がキャロルにはある。

「いいよ。今晩、一緒に入ろうか」