花のように笑うキャロルの口元に、クッキーの欠片がくっついている。
 お淑やかなのに、甘いものを前にするとちょっと抜けてしまうのも、可愛らしい。

「ついてるよ」

 欠片を指でとって口に入れると、キャロルはたちまち真っ赤になった。

「ありがとうございます……」
「どういたしまして。城中の鏡に当たったというけれど、宝物庫の大鏡は試していないよね」
「はい。宝物庫は番人さんが守っていらして、近づけなかったものですから」

 エイルティーク王室が所有している金銀財宝や芸術品、貴重品を数多く収蔵している宝物庫は、王太子ですら特別な許可無くして立ち入ることはできない。
 十二夜のまえは、欲しい物があって通い詰めていたが、用がなくなった今では近づきもしていない。