レオンは、お茶を移した水筒とさまざまなクッキーが詰められたバスケットを持ち上げて、テラスを後にした。

 花で飾られた廊下をあてどなく歩きながら、子猫のように好奇心いっぱいの婚約者がどこに行ったのか考える。

(自分の姿がよく見える場所……鏡のまえか?)

 鏡は城の各部屋に設置されているが、それでこと足りるなら自室のドレッサーに向き合って満足したはずだ。
 キャロルは、見えない数字を見るために、何か別の手段を探している。

 レオンは、礼拝室や図書館、応接間などを巡っていった。
 しかし、キャロルはどこにもいない。
 城内といないとすれば外だ。庭に下りて、庭園までの遊歩道を歩いて行くと、噴水のふちに愛らしい恋人の姿があった。