「キャロルがいない……」

 午後の仕事を抜けてテラスに向かったレオンは、もぬけの殻のテーブルを見てふしぎに思った。
 いつもなら、キャロルが先に着席していて、レオンが来るのを楽しそうに待っているのに。

「何かあったのか?」
「キャロル様付きの侍女によりますと、自分の数字を探しに行ってくるとおっしゃっていたそうです」

 側近の言葉を聞くかぎり、逃走したわけではなさそうだ。
 キャロルが言う『自分の数字』とは、好きと言った回数のことだろう。

 人の頭上にたえず浮かんでいるらしいが、なぜかキャロルは自分の数字だけ見えない。見てみたいと望んだとしても、不思議ではない。

「俺が探してみるよ」