「106,705回よ。昨日、マルヴォーリオに会ったのね」
「どうしてそれをご存じで?」
「数字が増えているもの。わたくしに挨拶に来てくれたマルヴォーリオも、かなり増えていたわ。二人が愛し合っている証ね。三ケタしかないセバスお兄様にも見習わせてさしあげたくてよ」

 このままでは結婚できないのでは。
 独身貴族になる心配をしていると、タリアはふふっと微笑んだ。

「セバスティアン様はあまり感情的になられないお方ですが、ああいう方ほど運命の相手には熱をあげるものですわ。キャロル様がご心配されずとも、いずれシザーリオ公爵家も奥様をお迎えしますよ」
「そうだといいけれど……」

 ふと、キャロルは自分の上を見上げた。
 青く高い空に、白い雲がたなびいているが、数字らしきものは、影も形も見えない。

「わたくしの数字は、どのくらいなのかしら……」