この能力が無くならないかぎり、キャロルの罪悪感は消えない。

 タリアは、レモンカードをたっぷりのせたスコーンを食べる手を止めた。
 妊婦は酸っぱいものほど食べやすいらしく、飲み物の紅茶にもレモンがたっぷりしぼられている。

「十二夜がはじまる前日に、急に見えるようになったとのことでしたが、何かきっかけはありませんでしたか?」
「心当たりはなくてよ。朝起きたら、タリアやマルヴォーリオの頭のうえに数字が見えていたの」
「朝起きたら、ですか。何かあったとすれば、その前日ですね。頭をぶつけられたり、悪いものをお召しになったりなさいませんでしたか?」
「していないわ」

 十二夜がはじまる前々日は、じつに平穏な一日だった。
 レオンとお茶をして、セバスティアンと食事をして、タリアやマルヴォーリオと会話をして――眠る前に、明日はもっともっと良い日になるように、祈って眠った。