水晶にはキャロルがいる場所――黒霧の森のまえが、白い光で表示されていた。
 キャロルは、手にはまった指輪をしげしげと見る。
 
「この指輪に、そんな力があったのですね」
「そう。俺はつねにキャロルがどこにいるのか分かっていた。シザーリオ公爵邸から脱走して町を歩いていても、城のなかを歩き回って人探しをしているときも安心していられたのは、そのおかげだよ」

 キャロルがどこに行ってもレオンに見つかったのは、明らかな理由があった。
 レオンは、キャロルを手の平のうえで踊らせておいて、素知らぬふりを続けてきた。

「俺は、君が生まれてからずっと、そういうことをしてきたよ。君が俺から逃げないように、俺だけを好きになってくれるように、君が知らないところで色々とやってきた。『好き』の回数なんて、当人も覚えていないものを見てしまうより、俺のほうがずっと卑怯だ――」