「はじめは軽い気持ちで見てしまったのです。そして、レオンさまのお気持ちを疑ってしまいました。こんな卑怯で愚かな人間は、レオンさまのお妃に相応しくありません。レオンさまは、品行方正で、誠実で、嘘を吐いたりなさらない、素晴らしい王太子ですもの」

 レオンを穢さないためにも、自分から身を引かなければ。
 けれど、レオンから離れたくない。

 キャロルは、相反する理想と欲望のはざまで苦しんでいた。
 悲しげに表情をゆがませると、レオンは小さな声でこぼす。

「キャロル。俺は、君が思っているような王太子ではないよ」

 懐から、地図板を取り出す。

「君にわたした指輪は、魔晶石という魔力がやどった石が使われているんだ。そろいで作られた水晶板の地図に、指輪のありかが示される。こんな風にね」