顔をあげたキャロルの瞳は、じんわりと濡れていた。

「レオン様。わたくし、思い切れませんでした」
「思い切らなくていい。君が無事で、ほんとうに良かった」

 抱きしめようと腕を回すと、すっと体が離れる。
 彼女の方から拒否されるのはめずらしくて、レオンは目を見張った。うつむいたキャロルは、おずおずと口を開く。

「お聞きください。わたくし、人の頭上に浮かんだ『好き』と言った回数が見えるのです。今も、レオンさまの数が見えています。……ごめんなさい」

 心からの謝罪を、レオンは黙って聞いている。
 何を考えているのか、読みとるのが怖くて、顔を上げられない。