当時は、勉学と剣や乗馬の稽古に追われる毎日だったが、時間をつくっては解毒の泉がある教会におもむき、神に祈りをささげた。

 お見舞いの薔薇を、窓辺に届けたりもした。
 キャロルが好きな品種は特にトゲが鋭くて、摘むだけでいくつもの傷ができたけれど、かまわなかった。

 キャロルが少しでも楽になるのなら、少しでも快復してくれるのなら、レオンは腕も足も目玉も心臓も、何もかもを失っていい。
 
(キャロル、愛してる)

 単なる好きじゃない。
 もっと心の深いところで彼女を想っていると、自覚したのはこのときだった。

 守りたい。何もかも、キャロルを傷付ける全てのものから。
 たとえ、彼女の自由を奪うことになっても――。