二本指を立てて前方に向けてふる『来い』のハンドサインを出すと、パトリックは扉から庭へと出た。
 そのまま併走する愛犬に、レオンは呼びかける。

「キャロルが黒霧の森に向かっている。俺が馬を走らせるより、お前の足の方が早い。彼女を見つけて、噛み木から守ってくれ」

 庭先で待たせていた白馬にまたがり、門に向かって走る。高速で迫ってくる王太子とパトリックに気づいた門番が、頑丈な扉を開け放す。
 白馬とパトリックは、同時に足下を蹴って門をくぐった。

「いけ!」

 ワン! と応えて、パトリックは進行方向に走り出た。
 黄金の毛並みをなびかせて速度を上げ、曲がり角でもためらうことなく先へ進んでいく。