レオンの頭から血の気が引いた。
 キャロルは、幼い頃に、噛み木の毒で死にかけたことがある。的確な応急処置と生命力により快復したが、次に噛まれたら命はないと言われていた。

 他人の『好き』と言った回数を見てしまったことに責任を感じている彼女は、噛み木の毒で自害を試みようとしているのかもしれない。

 レオンは、地図板を懐に入れて走り出した。

「パトリック!」

 庭のはしにある犬小屋のなかで伏せていた愛犬は、飼い主である王太子が姿を見せると、すっくと立ち上がった。