シザーリオ公爵邸を出たキャロルは、フラフラした足どりで町を歩いていた。
 夜通し歩いて、ようやく黒霧の森の近くまで来られたものの、ここまで体力がないとは思わなかった。

(はやく、はやく思い切ってしまわないと、レオン様が探しにいらっしゃるわ……)

 屋敷を出る前に、『好き』と言った回数が見えると懺悔する手紙を、マルヴォーリオにたくしてきた。
 あれを読んだら、いくらレオンでも怒るだろう。
 キャロルに十二夜の薔薇を贈ろうとは、二度と思わないはずだ。

 大好きな人に愛想を尽かされて、平然と生きていけるほど、キャロルは図太くない。
 だから、こうして死に場所に向かっている。

 どうして黒霧の森なのかというと、噛み木がいるからだ。