結婚前日になって、急に十二夜を拒否しはじめた婚約者に、さすがのレオンも戸惑った。
 お淑やかで心優しい、令嬢のなかの令嬢であるキャロルが反抗するなんて、前代未聞の事態である。

 嫌われたのかと思って探りを入れると、キャロルは言った。

 レオンが大事だと。レオンに幸せになってほしいと。
 レオンが大好きなのだと――。

 椅子に座り直したセバスティアンは、顎に手を当てて首をひねった。

「嫌なんじゃないのか? だって、逃走しているぞ」
「違うみたいだよ。俺の今までの努力は、それなりに実っている」