キャロルがこくこく頷くと、レオンは愛おしそうに微笑んで、裏庭へ走って行ってしまった。
 姿が見えなくなるまで見送って、薔薇を手にベッドに戻ったらば、侍女が起き出した。

「まあ、お嬢様。その薔薇はどうなさったのですか?」
「窓に引っかかっていて……げほっ、ごほっ!」

 無理に起きたのがたたって、キャロルは、再び倒れた。
 次に目覚めたときには、レオンから贈られた薔薇は、花瓶に生けられてサイドチェストにあった。色づいた花びらを見ると、胸がきゅんとなる。

(レオン様、だいすきです)

 どんなに苦しくても薔薇を見たら耐えられた。
 それから二ヶ月ほど療養して、ようやく調子を取り戻したキャロルは、王城にいるレオンに会いに行って、開口一番に抱きついた。

「わたくし、レオン様のお妃にふさわしい令嬢になってみせますわ!」