キャロルが口を両手で押さえと、レオンの口元が動く。

『はやく、げんきに、なってね』

 その言葉で、彼がここにいる理由が分かった。

 キャロルを心配してお見舞いに来てくれたのだ。
 昼間は大人に止められてしまうから、真夜中に城を抜け出して。手に怪我をしながら、キャロルがいちばん好きな薔薇をつんで。

(わたくしのために)

 ほわっと胸が温かくなった。これまでは、セバスティアンと同じ良いお兄さんだったレオン王子が、好きな人にかわった瞬間だった。