死んだ人は天国という場所に行くのだと聞いてる。両親は先に旅立っていて、いつかキャロルもそこに行くのだと執事が教えてくれた。
 天国はいいところらしい。
 何をしても痛みを感じず、お腹がいっぱい食べられて、楽しく笑っていられるらしい。

(それなのに、どうしてセバスお兄様は泣いたのかしら)

 もうろうとする頭で考えて、会えなくなるからか、と思い付いた。
 死んでしまったら、兄にも執事にもタリアにも会えなくなる。

 キャロルは、今までにお世話になった人びとの姿を思い浮かべた。どの人も心優しく、キャロルにさまざまな事を教えてくれた。
 なかでも、もっとも大切にしてくれたのは、婚約者であるレオン王子だった。