窓に背を向けたとき、外でカタンと物音がした。
 鳥も飛ばない真夜中に何だろう。
 起き上がったキャロルが窓をそっと開けると、花鉢を置くウインドウボックスに一輪の薔薇が置かれていた。

「八輪目の『真実』だわ」

 薔薇を手にとって階下を覗きこむと、裏庭から去って行くレオンの後ろ姿が見えた。わざわざシザーリオ公爵邸まで、忍んできてくれたようだ。

「レオン様、どうして……」

 暗がりに溶けていく金髪を見ていたら、ふいに昔の思い出がよぎった。