悩み事の相談を受けるぐらいレオンに信頼されているし、王妃の寵愛も固い。
 王太子が心から愛する人としては申し分ない女性だ。

(まさか、ニナさんがレオン様の好きな方?)

「それでは、俺達の結婚生活について占ってもらおうか。キャロル……キャロル?」
「はっ! 失礼しました」

 我に返ったキャロルは、スカートをつまんでお辞儀をした。

「はじめまして、占い師ニナさま。わたくしはキャロル・シザーリオと申します。シザーリオ公爵家の令嬢で、十六才になりました。趣味は田舎暮らしを空想すること、特技は人の顔と名前を覚えることです。こうしてお逢いできましたこと、心より嬉しく存じます」

 どんな場面でも礼節を忘れてはならない。
 きちんと挨拶するのは、シザーリオ公爵令嬢としての矜恃だ。

 たとえ相手が、大好きな人の、大好きな人だとしても――。