十二夜ある結婚式典のうち、七夜目だけは他と違っている。
 薔薇を与える側と受け取る側、両家の家族がそろって、薔薇を渡すさまを見届けるのだ。

 王侯貴族の場合は、真夜中から始まるパーティーを、多数の招待客を招いて盛大に行う。王太子の十二夜ともなれば、エイルティーク王国内で行われる七夜目のなかで一、二を争う規模だ。

 レオンとキャロルの七夜目の会場は、迎賓館の広いダンスホールだった。
 巨大なシャンデリアの白い灯りが、床にはられた大理石に反射している。四方八方に広がる光は、貴婦人の宝石やシャンパングラスに吸い込まれ、歩くたびにキラリと輝く。

 光の宿り木のように煌めく招待客のなかを、キャロルは、レオンと腕を組んで歩いていた。
 デコルテの開いた桃色のドレスは、レースが何重にもかさねられていて、胸元や裾にストライプリボンがあしらわれている。
 これはレオンが見立ててくれた。彼の宮廷服にも同じレースが使われていて、並んぶと揃いのビスクドールみたいだった。